「‥‥ココ、」
「?」
栖栗は、そこへと視線を向ける。
英が指差していたのは、新出単語の中でも太字で書かれている、見るからに重要そうな単語だった。
「太字で書かれてる単語は覚えた方がいい。まぁ、余裕があったら全部覚るのがいいけど──」
「あるように見える?」
ギンッと睨む栖栗の目は、今までに見たどんなものよりも迫力がある。
「うっ‥」
英が言葉に詰まると、栖栗は睨みをきかせたまま手を伸ばして、きっちりと整えられた彼のワイシャツの胸倉を掴む。
そして、力任せに自分の方へと引き寄せ──
「‥‥見えるって言うなら、動物病院に連れてくわよ」
脅しに似た言葉を一つ。
「‥‥ミエマセン」
「うむ。よろしい!」
すっかりシワがついてしまったワイシャツをぱっと離すと、栖栗は教科書にある単語をノートにすらすらと書き込んでいく。