栖栗は、そのゴールデンレトリバーに後ろから抱き付きながら、英語の教科書、及び白紙のノートと睨めっこしていた。
「‥あー‥でもやっぱり頭痛い。英語って未知の言葉だわ」
まるまる一ページに羅列された英文。
それはやはり、見ただけで脱力させるような効果を十二分に持っていた。
今にも首をうなだれてしまいそうな栖栗を横目に、英はページの下部にある新出単語の欄を指差す。
「気持ちは分からないでもないけど‥とりあえず、テスト範囲になってる単語から練習な」
栖栗は指を差された、ざっと十数個はあるであろう単語をじっとりとした目で見つめながら、眉尻を下げる。
「ねぇ‥もしかして新出単語、全部書いて覚えるんじゃないわよね?」
「覚えたいか?」
「冗談じゃないわ」
即答。
しかし、その声には活力が全くなく、ゴールデンレトリバーの荒い息遣いによって今にも掻き消されそうになっていて。
英は、そんな栖栗を見て苦笑いを漏らすと、トントン、と教科書を人差し指で軽く叩く。