「‥おじゃま、します」
翌日の放課後、英は市川家に来ていた。
珍しく、生徒会業務がなかったので、現在は夕方の四時。
空がまだ明るいせいだろう、時間の感覚を鈍らせ、まだ昼間なのではと思ってしまう。
何故、英が市川家にいるのかといえば、それはもちろん、栖栗に英語を教えるためだ。
栖栗曰く、英語そのもの、及びその勉強方法がよく分からないらしい。
英は、どんな風に教えることが、栖栗にとって一番いいのか、そして分かりやすいのかを頭の中で色々考えつつも、黒光りするローファーを脱ぐ。
エチケットとして、玄関の端にそれを揃えるが、栖栗はど真ん中に脱ぎ散らかして、さっさと階段を上り始めるものだから、慌てて彼女のローファーも揃えて、後に続く。
玄関までなら、よくいつものお迎えで見慣れていたのだけれど、中に入るのは実際これが初めてだった。
ドキドキ、する。
好奇心から、きょろきょろと、回りを見渡したくなる。
だけど、それはあまりにも不躾なので、英はグッと我慢して階段を上っていく。