初めて会話を交わしたときの衝撃発言─「私のものになってくれますか?」以来の頼みごとに、英は目を見開いた。
「そう。ほら、もうすぐ期末テストらしいじゃない?私、英語だけは全くダメダメなのよ‥‥だから、是非とも我がペットの力をお借りしようと思って」
断る、という選択肢は素より与えないつもりらしい。
栖栗は、ポン、と英の肩に手を置くと、穏やかすぎる笑みを浮かべる。
明らかな作り笑いに、英は顔を引きつらせるが、彼自身、断るつもりはなかった。
何故なら、他人に何かを教える、ということは、日々の生徒会業務で慣れていたし、嫌いというわけではなかったからだ。
「別に構わないけど‥他の教科は大丈夫なのか?」
「うん、それは大丈夫。だから明日から、勉強みてよ」
そう言うと、栖栗は、スクールバックのチャックを開け、中を漁る。
そして、そこから出てきた、レモンイエローのクリアファイルからメモ用紙が一枚、取り出された。
「これは‥?」
栖栗は、その問い掛けに答えることはなく、ただ、メモ用紙を英に差し出すだけ。