元々、学年順位は上から数えた方が早かったし、中間テストのときもそれなりに点数はよかったから、英語以外なら何とかなる、と、栖栗は思った。


──にしても、


「っい、市川、さん‥?」




英語、は、どうしてくれようか ?




けれど、栖栗の中ではもう答えはとっくに出ていた。


──私には、立派なチワワちゃんがいるじゃない!









今日も今日とて、生徒会長としての業務を遅くまで真っ当した英は、帰り道を、待っていた栖栗と共に歩いていた。

夏、だから、陽はすっかり長くなっていた。
六時になっても、やっぱり外は明るいから、妙な違和感すら感じる。

でも、暗いよりは明るい方が歩きやすいし、気分的にもこちらの方がいい、と、栖栗は思う。

赤い首輪は暗くなってしまえば、もう目立ったりはしない。

けれど、周りは明るいから、今は別だ。

英は堂々と道を歩くことができず、ただただ周りを伺っている。
いくら、首輪を着けるようになってから、三ヶ月ほど経ったとはいえ、こればかりは慣れなかった。





「──え?英語を、教えてほしいって‥?」