「ねぇ、チワワ」
「ん?」
「‥明日も、生徒会、あるの‥?」
人通りが多い、というわけではないが、お互いに微妙な距離をとって会話をしているせいか、少しだけ聞きづらいように英は思った。
いつもみたいに、大声を出せばいいのに、とぼんやり思いながら──
「あー‥‥ある、けど」
と、返す。
すると、栖栗が急に押し黙るものだから、英は聞き取れなかったのだろうかと思い、もう一度言おうとした。
「待ってるから」
ふと、呟かれた言葉は、異様に耳に響いた。
まるで、静かで何もない空間に鈴の音が一つ、響いたかのように。
先ほどまでは聞き取りづらいだとか、色々思っていたくせに、何故。
「え‥?」
英は意味もなく聞き返した。
首輪をしているところがじわじわと熱くなる。
栖栗はぴたりと立ち止まると、振り向きもせずに口を開いた。
「明日も、待ってる」
ぶっきらぼうにそう言うと、再び歩き出す。
先ほどより明らかに速足になったので、英は慌てて歩き出した。