担任の教師は腹がたぷたぷの中年親父、隣りの席はメガネをかけた地味な女子だった。
栖栗はホームルーム中も、今こうして入学式で校長の話を聞いている間も、ずっと心の中で溜め息を吐いていた。


──もし、あの学校に入られていたら、


自分の生活はもっと華やかなものになっていたに違いないのだ。
こんなありふれた生活なんて、今まで嫌という程経験してきたというのに。

春休みに期待していた、マンガのような青春の一ページは到底叶いそうにないようだ。

そもそも、この高校を受けたのは、当時の担任と親からの強い薦めがあったことが原因だった。
何故、この学校を薦められたかは栖栗には分からないし、分かりたいとは思わなかった。


「──それでは、在校生を代表して生徒会長の秋山英(あきやますぐる)さんより、挨拶を頂戴します」


こんなありふれた学校の生徒会長なんて、きっと何の面白みもないに違いない。
そう思って、栖栗が顔を上げた瞬間、在校生からは黄色い歓声が飛び交った。