栖栗の苛立ちはいよいよ頂点に達しようとしていた。
机を人差し指でコンコンコンコンと叩きたくなる衝動に駆られる。
けれど、もしそんなことをしたら、ただでさえ臆病者なメガネっ子の心臓は破裂してしまう、と、何とか残っている理性でその衝動を抑え込む。
「あ、あの、ね‥」
すると、メガネっ子はスカートのポケットからおぼつかない手付きで、シルバーの携帯電話を取り出した。
バッという効果音がつきそうなくらいに、勢いよく栖栗に差し出したかと思えば。
「メ、メアド、教えてもらっていい‥?」
「はい‥?」
どうやら今までの会話は、全て前フリだった、らしい。
面白い人間は、意外と身近にいるものだと、栖栗は思った。