翌日、英は律儀に赤い首輪を首に着け、市川家の前に立っていた。


栖栗曰く、

『主人の迎えはペットの義務!』

らしい。

はっきり言って、朝っぱらからこの姿で他人の家のインターホンを鳴らすことは多大な勇気が、いる。

このまま逃げてしまいたい、そんな衝動に駆られながらも、昨日のことを思い出してしまえばそうもいかないのが現状だ。

英は深呼吸をした後、人差し指を小刻みに震わせながらインターホンを、押した。


ピンポ──ン


チャイムが鳴り響いた瞬間、勢いよくドアが開いたかと思えば、そこにいたのは栖栗と例のゴールデンレトリバーだった。


「‥おはよう、」


犬とお揃いの首輪を着けている自分が、急にいたたまれなくなり、英は溜め息を吐いた。

ここ最近(主に昨日から)、溜め息の数だけが増えている。

そう思いながらも、尻尾を千切れそうなくらいに振るゴールデンレトリバーの頭をそっと撫でる。