生徒会長してではなく、一人の人間として、彼女に何かしてあげたい。
同情と言えば、それで終わりなのだろうが、きっと、それだけではないのだ。
彼女がぎゅっと握り締める赤い首輪。
きっと、彼女の愛犬であるゴールデンレトリバーの涎やら何やらで汚れや匂いは酷いに違いない。
それを着けるのには、正直、抵抗があった。
それでも、英は手を伸ばした。
空にはゴォゴォと音を立てて飛行機が飛ぶ。
グラウンドには賑やかな生徒たちの声。
きっと、そのせいだろう。
栖栗が不器用に「ありがとう」と礼を言ったことに、英が気がつけなかったのは。