英は、目を見張った。

彼女が自分を選んだのは、もしかしたら、思い付きとか、そうゆう単純なことではないような気がした。

気がしたから、何も言えなくなった。


「決めたのよ‥っ!」


栖栗の小さな拳は小刻みに震えていた。
それに反応するかのように、英の心臓の音が、ドクドクと速まる。


「‥‥君みたいに‥」

「‥‥?」


栖栗が顔を上げる。

その表情が先程と比べてあまりにも、切なそうだったから、英は少しだけ、笑った。


「‥君みたいに、強情な人間はそうそういないと思うよ、」


──だって、生徒会長としてではなく、一人の人間として自分をこんなに欲しがるのだから。


考えてみれば、そんな人は今までにいなかった。

いつも、英には“生徒会長”という肩書きが付いて回ってきた。

だから、少し、それにも飽きてきたのかもしれない。

それに、嫌味たらしい栖栗があんなふうに俯く姿は、もう見たくなかった。
もとより、優しく面倒見がいいから生徒会長に抜擢された英だ。
だからこそ、余計にそう思ってしまったのかもしれない。