赤い頬は、きっと熱があったから、だったのだ。
英は、言われて、やっと気が付いた。
もっと早く分かっていたら、何かしてあげられたかもしれない、と、色々な考えがぐるぐると頭の中を巡る。
そして、ドクンドクンと、大袈裟すぎるほどに跳ね上がる心臓。
たじろぐ足、じりりと後退りをして、英は拳を握った。
英は、無意識に走り出した。
廊下は走るな、と英はよく生徒たちを注意していたものだが、今はそんなことすら忘れ駆け出していた。
向かうところは、ただ一つ。
行かなくちゃ、という義務的な感情は、全くなかった。
ただ、今すぐ会いたい、とそう思ったのだ。
「!!?あ‥」
すっと自分の横を駆け抜けて行った英に、瞳は唖然としながら、ゆっくりと振り返る。
その、遠ざかる背中には“生徒会長”は感じさせなかった。
いつもは颯爽と廊下を歩いている彼にも関わらず、今はがむしゃらに走っている。
ふわふわと靡く髪、が、とても綺麗だと瞳は思った。
そして、控え目に、手を振って、呟く。
「いって、らっしゃい」
心から笑う。
それは、最初で最後の、言葉だった。