どうやら、話が長くなると思っているらしい英は、足元にスクールバックを置く。
瞳は、もう一度息を吸って吐く。
真っ直ぐに、目の前の彼を見る。
そして、口を開く。
「市川さんが、倒れた、よ‥っ」
英は、固まった。
あまりに響いたその言葉に目を見開いたまま、まるで石にされてしまったかのように。
「え‥?」
英は、眉間にしわを寄せながら呟く。
そこには、続きをせがむような、現実逃避をしてしまいたいような、複雑な感情が入れ混じっている。
瞳は、言葉を続ける。
「‥い、一時間目のテストのとき、倒れたの。もっと、早く話しておけばよかったんだろうけど‥‥テストだったし、お、終わってからでもいいかなって‥そう、思って‥」
瞳は、一時間目にあったあの出来事を今でも鮮明に覚えていた。
何せ、隣りでその光景を目の当たりにしていたのだ。
それでなくとも、人が倒れるという光景は滅多にないものだから、嫌でも脳裏に焼き付いてしまう。
「やっぱり熱、あったんだ‥っ」
英は目を見開いたまま、足元に視線を落とし先日の栖栗を思い出していた。