「‥‥っ!?」


栖栗の手に乗る犬用の首輪を見て、英は目を見開いた。

この十何年、言葉を失うほどに驚くことはそうそうなかった。
でも、こればかりはそれだけでは足りない。

言葉を失うどころか、何か大切なもの(主に精神的な面で)を失ってしまいそうな気さえする。


「く、首、輪‥?」

「そう、首輪よ。他の何かに見える?」

「否、てゆうか何でそんなもの‥」

「私の犬になってほしいから」


だから、愛犬のゴールデンレトリバー(♂)から拝借してきたの!


栖栗は自慢げにそう言うと、英の首にそれを着けようとする。

けれど、英は慌ててそれを拒んだ。

何故、自分が愛犬だというゴールデンレトリバーのおさがりを着用せねばならないのか。
そもそも、何故彼女の犬に成り下がらなくてはならないのか‥

そう疑問に思ったからだ。
まさか拒まれるとは思わなかったのだろう、栖栗はきょとんとしながら、どうしたのと首を傾げた。