すると、その女子は、ウエーブがかかった長い髪を目一杯揺らし、瞳をきらきらと輝かせながら、彼を呼ぶ。
「英くーん!一年生の子が呼んでるよぉっ」
ブンブンと手を大きく振り、猫撫で声を上げた彼女は、やってきた英を見て頬を染めたのち、瞳にそっと耳打ちする。
「告白したって、どうせ断られるのがオチ、よ。私は、負ける戦はやらない方が賢明だと思うけどなぁ」
「!!?‥‥っそ、ゆんじゃ‥ない、です」
瞳は首を大きく横に振ると、どこかムッとしながら唇を尖らせた。
英は、そんな二人を横目に見ながら怪訝そうな顔をすると、スクールバックを肩にかけた。
ウエーブ女子は、慌てて笑顔を作ると瞳をじっとりとした目で見つめたのち、英の肩をポンッと叩き、また明日ねっと甲高い声で言う。
瞳は、びくびくと肩を震わせながら、女子の態度の変化というものは実に恐ろしい、と思って、今にも腰が抜けそうになっていた。
英は、先ほどの女子の背中を見送ると、誰かに聞こえてしまわぬように、そっと瞳に耳打ちする。
「‥‥お前がオレを訪ねて来るなんて珍しいな」
瞳は小さく頷く。