テストの終了が正午に近かったせいか、生徒たちは廊下に出した荷物を教室へ戻したあと、一斉に弁当を広げ始めた。
現在の三年二組には、弁当特有の匂いが立ち込めている。
瞳は、そんな教室を目指しながら廊下を歩いていた。
時折感じる、先輩からのねっとりとした視線に、居心地の悪さを覚えながら瞳はその細い肩を震わせる。
最高学年である三年生の教室が位置するこの長い廊下を歩くことは、はっきり言ってこれが初めてだった。
一年生にしてみれば、三階にある三年生の教室は、彼らの陣地であり聖域のように思えていたものだから、自然と足が遠のいてしまうのだ。
それは、口に出さずとも、誰もが何となく分かっていたことなので、ここに一年生である瞳がいることは、とてもとても珍しい。
しかも、一人で。
しかも、異様にキョドりながら。
「あ、あの‥」
やっとの思いで着いたお目当ての三年二組。
底知れぬ達成感に浸りながらも、廊下側に席がある女子にこれまたキョドりながら話しかける。