その微笑みは、周りからしてみれば、年相応の表情かもしれない。
だけど、いつもは無邪気な笑みを見せる彼だからこそ、それは、とても貴重な一面だった。
「そか。‥まぁ、あそこは秀才揃いだけど、基本、みんなアホばっかだし‥お前みたいな変わり者がいても、確かに浮いたりはしねぇな」
「変わり者って何よバカ!」
少女は、小さな手で机をバンッと叩くと、ヒステリックに叫ぶ。
悦司は、ニッと無邪気に笑うと、どうどうと言って手をひらひらさせながら、少女を宥める。
すると、途端に少女はおとなしくなり、とゆうか呆れ果てたらしく、くるりと参考書に向き直る。
参考書には、少女が苦手な英語が紙一面にびっしりと連なっていて、見るだけでうんざりしてしまう。
「‥‥でも‥認めたくはないんだけど、今の私にはレベルが高すぎるのよね‥だから、絶対行けるように、頑張る、わ」
英文を人差し指で、そっと撫ぜる。
悔しそうに、嘲るように言って、目を伏せる。
すると、ふと、少女の頭に大きな手が乗ったものだから、華奢な彼女の肩はびくんと大袈裟なほどに震えた。