もしかして、と思いながらも瞳は、松永の目を盗みながら、栖栗の方へと少しだけ身を傾ける。
「あ、あの‥いっ市川さん、顔‥赤くない‥?だ、大丈夫‥?」
瞳は、口許に手を添え、声が響かないようにそう言うが──‥
「気にしないで」
栖栗には、全くそういった気遣いがないようで、大きな声できっぱりと告げた。
その姿は何故だかムキになっているようにも見える。
「で、でも‥」
やっぱり顔が赤いよ、熱があるんじゃない?
そう言おうとしたが、松永が気がついたらしく、キッと鋭い目付きで栖栗と瞳を睨む。
「オイ、そこ喋るなーテストの点下げるぞ」
そして、バシッと教卓を叩く。
乾いた音が響き、生徒たちの緊張が高まる。
かと思えば、チャイムが鳴り、松永は口を開いた。
「開始!」
こうして、期末テスト一日目にして、一時間目である英語のテストが始まった。
教室には、ピン、とした空気が張り詰めている。