「生徒会長ってのは、生徒が楽しく学校に来られるように頑張らなくちゃいけないでしょ?」

「‥まぁ、」

「私ね、あのとき期待してたとおりの毎日が欲しいの。だから私が楽しい日々を過ごせるように努めるのも先輩の役目ってわけ」


淡々と持論を語る栖栗に圧倒されながらも、それが正しい意見だったこともあり、英は何回か相槌を打った。

けれど最後の言葉で、まるで自分が彼女の召使だと言われているように感じてしまい、英は深い深い溜め息を漏らした。


「あのなぁ‥オレは──‥」

「だからね、私、先輩のことも欲しいんだ」


言葉の上に言葉が重なる。


栖栗の思いがけない言葉に英の体が強張る。

周りの音や景色が一切遮断され、感じるのは自身の高鳴った鼓動だけのように英は感じた。
何がとか、何でとか、そんなことを言うよりも、栖栗の言葉の先が欲しくて、英は黙ったまま彼女を見つめた。

「私、わがままなの。手に入らないものがあるなんて、そんなの、許さない」


だから受け取ってくれますか?


初めて使われた敬語に、英は酷く動揺した。

何故なら先程までの彼女ときたら、偉そうで、嫌味で。

でも、今のは違う。

謙虚で、どこか儚げで──思わず、守ってあげたくなるような印象を受ける。


栖栗は無表情でスカートのポケットを漁ると、真っ赤な首輪を取り出して、にっこりと可愛らしい笑みを浮かべる。

その白く小さな手に乗る大型犬用の赤い首輪は、怪しくギラリと光を放つ。