ファンデーションを塗りながら”今日はのりが悪い…”と思った。
あの人の夢を見たからだろうか。
少し疲労の覗く顔に、私はいつもよりも丁寧にファンデーションを塗る。
知的そうな、少し太めの眉を描き
元々キツめの吊り上がった目をカバーするようなラインを引き
つけ睫毛を過不足なくつけた睫毛に、2種類のマスカラを重ね塗りし
茶色を基調としたシャドウを塗って
ケバ過ぎない落ち着いた紅色のグロスをつけた。
そして最後に、黒い艶のある長いストレートの髪に丁寧にアイロンをかける。
そしてまた、溜め息をひとつ…。
目を開いて鏡を見たら、そこには歌舞伎町には珍しいキャバ嬢 名波真 が出来上がっていた。