珍しく、あの人の夢を見た。 手を伸ばしても、届かなくて 名前を読んでも、届かなくて 走っても走っても、届かない そして、一度もこちらを振り返る事なく深い霧の中へ消えてゆく…。 あの人の夢を見る時は、決まってこの場面だけ。そして目覚めた時には、ツーっと頬に冷たい水滴の跡を感じる。 これは、涙なのだろうか…─