そしてそんな私に皆は口を揃えて「才能あるね」と言う。
私自身、知識を得るために人一倍の努力はしたけれど、それは盾や矛のように私を飾る一つの武具でしかない。
客の求めるものを逸早く見つけ出す事に関しては、この仕事を始める前から既に備わっていた。
それだけじゃない。
私は絞れるだけ金を絞り出させるし、不要となった客はすぐに切る。
客と寝る事だって出来る。
つまりは金のためなら…いや、この歌舞伎という町で名を轟かせるためなら、何だって出来る訳だ。
情なんて、ある訳がない。
そんなものはとっくの昔に捨てた。
この鏡の前で憂鬱そうな顔をしている"名波真"は、もう何年も前から私であって私でないのから。
声も
涙も
微笑みも
感情も
"私"さえも
今の私にとっては全てが偽り。もう"本物"がどういうものだったかなんて…解らない。
けれどこの世界で成功するためにはそれが必要で、そうなるためには皆痛みを味わう。
"出来上がった私"にしたら、この仕事は天職なのかもしれない。