私の、あの頭の痛みは、重い重い病気だった。

『癌 (ガン)』

私の残りの人生は、長くて3ヶ月。


残りの3ヶ月、昂樹と一緒に過ごしたかった。

私・・・知ってるんだよ。


この前、わざわざ私の病室のベッドの窓から見える、裏庭を、美沙と2人で手を繋いで歩いていたね。

美沙・・・。

私ね・・・美沙のこと、ずっとずっと信じてたんだよ・・・。



コンコンッ。

部屋のドアを誰かが叩く。

「どうぞ。」

ガチャッ。

きっと結衣が来てくれたんだ。

「紗実っ!久しぶりだな・・・。」




この声・・・。

昂樹だ・・・。


「誰?」

私は窓側を向いている。

「俺だよ・・・。」

わかってる・・・わかってるけどちょっぴり意地悪してみる。

「昂樹だよ・・・。」

私は初めて窓側に背を向けた。

私の姿を見た昂樹は口をポカンと開けていた。


「これでも私に言いたいこと言える?」

今の私の姿は、今までの自分とは思えないほど、顔は痩せ細って、脚や手も、ずっと細くなっていた。


「ごめんな・・・。俺、美沙に言われてたんだよ。お前とこのまま付き合っていたら、紗実を傷つけてやるって・・・。俺だって別れたかった訳じゃねぇんだよ・・・!」


「私が昂樹に『別れ』を告げられて、どんだけ苦しんだかわかる?」

「・・・・・・・・・・・・」

昂樹は何も言わずに、病室を出ていった。

これが私の精一杯の強がり・・・。

本当は、本当は元に戻りたいだけなのに・・・。

けど・・・

昂樹に幸せになってほしいから・・・。

私が苦しんで・・・苦しんででも、昂樹には、あとの3ヶ月の私と一緒に苦しませるのならば・・・ならば苦しむのは私だけで十分です。

これ以上、私を苦しめないで。




さよなら私の一生。

さよなら私の人生。



そして


さようなら・・・


私の初恋の貴方・・・。



2002年、12月25日。

私は息を引き取りました―。



最後も・・・最後まで貴方のことを思い続けながら・・・。