薫子が朝食の片付けをしていると

凪斗の視線を感じた。

目を合わすと、彼は、はにかんだ笑みを

浮かべている。

「そんなに見ないでよぉ」

「見てませんよ」

「ずっと見てる!身体に穴が開きそう!」

薫子は、視界から逃げるように部屋を出た。

もう一度洗面所の鏡を覗くと

さっきとは違う女が映っていた。

一人恥ずかしくなり

顔が赤くなってしまった。

昨日とは違う自分に戸惑いながらも

嬉しさは隠せなかった。

コーヒーを二人分淹れて部屋に戻ると

凪斗は着替えを済ませていた。

「帰るの?」

「どっちが良いですか?」

凪斗は不適な笑みを浮かべ

薫子の返事を待っている。