こんな薫さんを見たのは初めてだった。

いつも元気で明るくて、周りの人にも

ちゃんと気が使えて・・・

だけど、目の前の薫さんは

怒られた子供のように怯えていて

とてもか弱かった。

「やっぱり、俺じゃあ駄目ですか?」

薫さんは黙って首を横に振った。

「じゃあ、どうして?」

「・・・」

「年下だから?」

「・・・」

「頼りないから?」

「・・・」

「俺、薫さんが好きです。

 それだけじゃあ、駄目ですか?」

顔を覗き込むと涙をいっぱい溜めて

俺を見つめてきた。

その瞳から大粒の雫が落ちて

頬をつたうと、猫が気付いて涙を舐めた。