「やった!母さん!怜奈が目を覚ました!」

私は目覚めた。そこは病院のベッドの上だった。私の前で喜んでいるのはお父さんだった。

「よかった。ほんとどうなることかと。本当によかった」

お母さんも涙と鼻水でグシャグシャ顔で喜んでいた。


「そうか、私…」

彼氏にフラれて、自暴自棄になって、部屋で睡眠薬飲んだんだ。


「助かった…んだ」

「あなたの部屋の扉を、チックが内側からずっと叩いていたそうなの。それを不審に思ったお隣さんが大家さんに言ってくれて、中に入ったらしいのよ。ほんと、危ないところだったわ」


チックが…チックが助けてくれたんだ。

「お母さんチックは?」

その時のお母さんの態度は、私に最悪の返事を容易に想像させた。

「大家さんが扉を開けたとき、もうすでに玄関で冷たくなっていたそうよ」






私自身は発見が早かったこともあり、命に別状はなく、2日入院しただけで完治した。

「私たちもいるのだから、一人で悩まずに、何でも相談しなさいよ。もうあんな馬鹿なこと考えたらダメよ。あんたの未来はこれからなんだから」



その通りだ。チックも、そう言ってたな。





私は気分を変えるため、いつもの道から一本奥の路地へと足を踏み入れた。

大学に通うために借りたワンルームへの帰り道は、私に新鮮な気持ちを与えた。

「あ、あった」

小さな、ブランコと砂場だけの公園があった。私が夢で見たあの公園と全く同じだ。


ワンダー公園。


私は柵の切れ目でかろうじて入り口と分かる場所から公園に入り、砂場に入った。


そこに夢を掘る犬たちの姿はなかった。


「それは…そうよね」


私は立ち去ろうときびすを返した時、それを砂場に見つけた。屈んで、手にとって拾い上げた。


小さな、空色のビー玉が私の手の中で青く光を放った。


   (終わり)