「チック、あきらめずに掘り続けなよ!俺なんか三日も掘ってやっと出てきたんだぜ」

そう言ったのはチワワのチー坊だった。チー坊は、ジャーキーを本当においしそうに食べていた。


「時間がないんだ。もう間に合わない」

チックのその言葉に、砂場の犬たちは一斉に掘る手を止め、チックのもとに集まった。それはまるで、ピンチのピッチャーを気遣ってマウンドに集まる野球選手のようだった。

「時間がないとはただごとではないな、よかったら聞かせてみな、お前の夢を」

プードルがチックに言った。チックは頷くと自分の夢について語り始めた。


「クーン、ワンワン…」

「ワン?ワワン!」


ちょっと!何で肝心な時に犬語に戻るのよ!

結局そのやりとりは私にはさっぱり分からなかった。


「よし!そう言うことなら、ここにいる皆でチックの夢を掘ろう!」

何とチックは、全員に手伝ってもらって穴を掘ることになった。

「ねえ、チック?みんなの手を煩わせて、ちょっと欲張り過ぎない?」

私がそう言うと、穴を掘るのを手伝っている豆芝が私に向かって胸を張って言った。

「男のロマンさ!俺たちは、こいつの夢のでっかさに男気を感じたのさ。お嬢さん、自分の飼い犬の晴舞台、そこでしっかと見届けておくれよ」

「私は女だけど、チックのロマンは分かるわ!途方もない夢だけどね!器の大きさを感じるわ」

ミニチュアダックスがチックに熱い眼差しを送った。