「あなたは何を探しているの?」

「僕は骨付き肉。多分もうすぐ出てくる。そんな気がするよ」


そんなものが埋まってる公園なんて変わった公園だな。

いやいや、その前に犬がしゃべることの方が異常だ。

私、現実のあまりの辛さのせいで幻覚を見ているのかも知れない。

正に超弩級の現実逃避だ。

でも、もう少しこういうのに浸るのも悪くないな。

「あった!でっけぇ!」

マルチーズが穴から出したのは、大きくて立派な犬小屋だった。出る瞬間を見逃したから分からないが、いったいどうやってあんなに大きな犬小屋を彼は掘り出したのだろう。


「かわいい、こういうのが欲しかったの」

ミニチュアダックスは女の子だった。彼女が堀り当てたのは、ピンクの首輪だった。


「ここは、みんなの夢が埋まってる公園、ワンダー公園なんだ」


ついに骨付き肉をゲットしミッションコンプリートしたプードルが、ご満悦の様子で私に教えてくれた。

「君も掘ってみたら?」

「私には、何が埋まってるの?」

プードルは私の言葉に小さくため息をついた。

「人間て変な奴だなあ。自分の夢も分からないのかい?欲しいものを考えながら掘るだけでいいんだぜ」

そう言うことか。望みは何でもかなうのかな。

「まあ、とりあえず掘ってみなよ、何か出てくるよ」

「じゃあ、遠慮なく」


私は両手で砂場の砂をかき始めた。

公園の砂場で砂遊びなんて何年ぶりだろう。私の手に、幼い頃の記憶と感触が蘇る。

(浩三とやり直せますように…)

私は終わりを告げた恋の復活を願った。