「君も穴を堀りに来たの?」

えぇっ!?この犬、しゃべってる!!

「あ、いや、その、何してるのかなあと思って見に来たの」

私、犬と会話してる!!

「この公園に来てすることなんて決まってるじゃん。穴を掘るんだよ、みんなみたいに」

そう言うとプードルは辺りを見渡した。私もつられて砂場を見回した。


「うわっ!いっぱいいる!」

今の今まで気付かなかったが、砂場にはたくさんの犬がいて、各々砂場の適当な所に穴を掘っていた。数えるとプードルを合わせて7匹もいた。

マルチーズ、チワワ、ミニチュアダックス、豆芝、ポメラニアン、そしてウエストハイランドホワイトテリア。

みんなちっちゃくてかわいい犬だ。そんな彼らは皆必死に穴を掘っていた。砂場には彼らのお尻と尻尾が出ていてフリフリしている。

「出た!」

その時チワワが顔を出して叫んだ。その声に犬たちは皆一斉に掘るのをやめて、チワワに注目した。

「じゃーん!」

チワワがそう言って穴から出してきたのは、たくさんのビーフジャーキーだった。

次々に出るわ出るわ。その勢いはとどまることを知らない。

「やったなチー坊!!」

皆から喝采が起きた。

「どーもどーも!」

チワワは周りのみんなにそう言って頭をさげると、ビーフジャーキーの袋を器用に口で開け、中身を食べ始めた。

それを見届けた犬たちは、また持ち場に戻り穴堀りの続きを再開した。


「ジャーキーが埋まってるんだ」

私は再びお尻だけになったプードルに話し掛けた。

プードルは掘る手を止めず、お尻ごしに私に話した。

「埋まっている物はその犬によって違うんだ。ここには、僕たちの欲しい物が埋まってるんだ」

「欲しい物?」

「そうさ。あのチワワはジャーキーが食べたくて食べたくてあそこを掘ってたんだ。今日で三日目だった。出てきてよかったよ」