「……なぁ……まだ着かないのか?」
目の前をパタパタと軽快に飛んでいる《少女》にそう問い掛ける。
出発してから……すでに半日は歩いている。
幸い魔物には一度も出くわさずにここまで来たが、体力はもう限界だ。
セリアは微かに俯いたまま、黙々と俺の後ろを歩いている。
ジルは……なんだか不機嫌そうだ。
……顔が怖い。
「も~!だらしないわね!!」
少女はクルッと身を翻し俺を振り返ると、呆れた様に溜息を吐いた。
その少女の答えに、氷の様に冷たいジルの視線が俺の背中に突き刺さる。
……お、俺のせいじゃないのに。
後ろから感じる禍々しい気配には無視を決め込み、眉を顰めたまま少女を見つめた。
「仕方ないだろ?お前に会う前に俺達は二日も遭難してんだぞ」
そう言った瞬間、この森をあても無く彷徨った壮絶な記憶が頭を過り、ガクッと肩を落とす。
そんな体で半日も歩き続けた事が奇跡に近い。
「もう少しで着くわよ!頑張って!!」
少女はそう言うとまた俺に背を向けて、パタパタと森の奥へと飛んでいく。
……コイツの『少し』はあてにならない。
結界まで二時間だと聞いていたが、半日歩いても一向に着く気配は無い。
後ろから二人のため息が聞こえ、それに重ねる様に大きな溜息を吐く。
……まだまだ道のりは長そうだ。