「ここは……迷いの森?」

眩い光が消え去ったその後に、そっと目を開くと……そこにはどこまでも続く深い森が見えた。

髪を撫ぜる風と共に、懐かしい木々の香りがする。

……どうやら元の場所に戻ってきたらしい。

「セリア。俺達がここを離れてからどれくらい経っている?」

「……う~ん。あっちとは時間の流れが違うから……多分五分位だと思う」

未だ青い顔をしたままのジルの問いに、セリアは考える様に腕を組んで首を傾げ、そう答えた。

その仕草があまりにも可愛くてついつい見惚れてしまう……って、バカか俺は。

頭の中の自分の思考に思わずつっこみを入れると、ブンブンと顔を振ってそんな考えを吹き飛ばした。

「どうかしたの?」

その声と共に顔を上げると、ほんの数十センチ離れたその距離にセリアの顔があった。

吐息すら感じそうなその距離に、一瞬で耳まで真っ赤に染まる。

「な、な、何でもない!!」

そう言ってブンブンと手を振って慌てて距離を取ると、セリアは不思議そうに首を傾げて困った様に笑った。

心臓が壊れそうな程、ドキドキしている。

……こ、これって……まさか……

そんなくだらない事を考え強く胸を押さえていると、そんな俺を無視してセリアがジルに近寄って行った。

だるいのか木に寄り掛かっていたジルの目の前に立つと、セリアは何も言わないままジルの胸元にそっと手を翳す。

「……な、なんだ?」

ジルが少し驚いた顔をして困った様に俺を見た。

その次の瞬間、緑色の淡い光がセリアの手から溢れ出し、それはジルの体を静かに包み込んで行く。

「少しくらいなら回復魔法が使えるから……ちょっとは体力戻ると思うよ」

そう言ってセリアはニッコリと可愛い笑みを浮かべた。

そのセリアの言葉はどうやら本当の様で、ジルの顔色は見る見るうちに良くなっていく。