そっと目を開くと、そこは辺り一面、白で埋め尽くされていた。
圧倒的な……《白い世界》
上も下も右も左も、同じ空間が果てしなく続いている。
腕を伸ばしてみるが、手に触れる物は何も無い。
床はある様だが、ある様な気がするだけで……本当は無いのかもしれない。
どこか体が浮いている様な、奇妙な感覚がする。
……なんなんだ……ここは……
急に不安になり辺りを見回すと、数十メートル先にジルがうつ伏せの状態で倒れているのが見えた。
「……おいっ!ジル!!」
彼の名を呼びながら、慌てて駆け寄り声をかける。
怪我はしていない様だが、返事がない。
どうやら……気を失っている様だ。
「ジル!起きろってば!!こんな所に俺を一人にしないでくれ~!!」
そう必死に声をかけながら何度か揺すってみるものの、ジルは一向に目を覚ましてくれない。
……こ、こうなったら仕方が無い。
遠い昔に読んだ雪山遭難マニュアルに、気を失った仲間がいたらすぐに目を覚まさせなければいけないと書いてあったのを思い出す。
……そう、これはいわばジルの為だ。
そう自分に言い聞かせるようにうんうんと一人で頷くと、決意を固め……ジルの頬を思いっきり平手で叩いた。
バシッと小気味よい音と共に手にジーンとした感触が残る。
とにかくジルの目を覚まさなければ……
こんな所に一人で居るのはとても耐えられない。
ジルのいつもはムカつく余裕っぷりが急に恋しくなった。