目の前には大勢の兵士が、隊列を乱す事無く進んでいる。
それは足並みを揃え、この国の全てを奪いに来た《敵》へと真っ直ぐに向かって行く。
「どうして……ついてきた」
その俺の問いに《彼女》は首を傾げてニッコリと笑った。
馬に乗りグレノア軍の元へと進む俺の後ろに……アシュリーがいる。
意外な事に彼女は器用に馬を乗りこなし、あれほど城に戻れと言ったにもかかわらず、トコトコと俺の後ろをついてきていた。
「一人では……寂しそうだったから」
そう言ってアシュリーは優しく笑うと、そっと自分の胸に手を触れる。
「私にだって《証》があります。それならば多少の戦闘能力はある筈でしょう?」
アシュリーはそう言うと、乗っている馬の頭をそっと撫でた。
馬はそれに応える様に小さく嘶き、前へと進み続ける。
「分かっているのか?これは戦争なんだぞ。お前は……人間を殺せるのか?」
目を逸らした俺のその問いに、アシュリーはほんの少し目を丸くすると……それからニッコリと笑って見せた。
「それが《大切なモノ》を守るためならば、私は迷わずに目の前の《敵》を殺しましょう」
そう言ってアシュリーはそっと瞳を閉じる。