「貴方もここがお気に入りなの?」
急に後ろから声が聞こえ振り返ると、そこには見知らぬ若い女が立っている。
「………」
無言のまま冷たい視線を返す俺の姿を見て……突然女がクスクスと笑い出した。
「私、ライラ。この近くの村に住んでるの。……貴方は?」
ライラと名乗る女はそう言って首を傾げて俺の答えを待つ。
……怪しい。
……関わらない方がいいな。
無視をする事に決めた。
目の前には美しい泉がある。
水面が柔らかに太陽の光を反射させる、静かな森の小さな泉。
……最近、気に入っている場所だ。
掟に囚われた窮屈な城での生活も、ここに来ると忘れる事ができる気がした。
「私もここが気に入ってるの」
女は無視されるのも構わずに話しかけてくる。
……せっかくの癒しの時間が台無しだな。
女を無視して立ち上がり、後ろの木に繋いである馬の元へと歩く。
……なんなんだ……一体。