真夜中に不意に目が覚めそっと目を開くと、窓から淡い月灯りが差し込み薄っすらと辺りが見渡せた。
クリスタルのシャンデリアや、アンティークらしい家具。
……そっか……城に泊ってたんだ。
その事実を思い出しそっと体を起こすと、隣のベッドでジルが眉間に皺を寄せて眠っているのが見えた。
(………)
誰かの声が聞こえた気がして、そっと顔を上げる。
キョロキョロと辺りを見回すが……特に変わったところは無い。
……気のせいだろうか?
(……き……て)
……やっぱり声がする。
……呼ん……でる?
声はどうやら俺を呼んでいるらしい。
……一体……誰が。
フラフラとベッドから立ち上がると、掛けていた布団の上から何かが転がり、絨毯の敷かれた床にポトリと落ちた。
……鍵。
ジルに預けていた筈のその鍵が、何故か俺の目の前に落ちている。
……何か伝えたい事があるのかもしれない。
不思議と恐怖は無く、切実に俺を呼び続ける声の正体が気になった。
そっと落ちている鍵を拾うと、それをズボンのポケットにしまった。