「菅野……ちょっといい?」







俺達は
誰もこない
屋上の隅にいた




「…何?」


「あの日、
なんで泣いてた…?」


―ズキッ


まだ心臓が痛む

思い出したくない…


「菅野…?」

気付かないうちに
あたしは
自分の胸に手を
あてていた


「…大丈夫か?
心臓痛いのか?」

心配そうな
顔でのぞきこんでくる



なんで
北野…

やめてよ…


あたしに
優しくしないで



「…関係ないよ。
ただ胸が痛くて
泣いてただけ。」



「……。

なんか悩みでも
あんなら
俺に話せよな~…
…って言ってみたり」




―優しくしないで





「菅野っ
俺…そ…相談のるよ?

俺でよければ」



―や
――さ
―――し
――――く
―し
――な
―――い
――――で







風が吹いた


髪が大きくなびく




「…もう、話かけないで」





ああ…
あたしはいつもこう
自分で
救いの手を
振りほどく―――



そして
どんどん闇の中に
落ちていく―――