「宜しく、ひいや」
そっと手を差し伸べるとひいやは恐る恐るという感じに手を差し出した。その手は間違いなく温かく、懐かしささえ覚えた。
そう、まるで芙美の……。
(――あれは、事故だったのよ)
気持ちを切り替えるようにメッセンジャーバッグを提げ、家を出た。和葉のベージュ色の長い髪がひるがえる。
まだひいやが一緒に住む事になることに納得がいくわけではないが、あんな幼い少年を追い出す気にもなれず、父のおかげでお金だけは山のように在るため人が一人増えたところでどうってこともない、
だが、普段余り人とつるむ事を好まない和葉としては息抜きする場所が減ったかな、なんていう想いもある。
「いらっしゃいませー」
コンビニ店員の取り繕った笑顔を見てお菓子でもと思い下着をとった後菓子売り場へと向かった。