「黙れっ!」

無意識の内に、俺は颯の胸ぐらを掴み、教室の壁に押しつけた。

教室中が驚き、男子の数人が止めに入った。


「お前になにが分かる?」

俺より体格の良いヤツに俺は羽交い締めにされながら、颯に言った。


そして、颯は答えた。




「俺も、大切な人は、みんな、奪われてしまったから」





小さな声で、でも確かに、俺のカラカラに乾ききった心に響く声だった。