「…あたし、貰っても、」

「夏楠じゃなきゃダメ。純のお願いだから、……貰って?」




夏楠の震える手がギターに触れる。



純自身に触れるように、優しくギターを抱いた。






それだけ俺達にとって、純の存在は大きかった。








「…ホントに貰ってよかったの?ギターケースも、」



部屋を出たときに聞かれた、



「俺が持ってても仕方ないし、ケースはいっぱいあるから大丈夫。」




ありがとう、そう言って笑った夏楠、少なくとも今の笑顔は本物だ。





「あれ?」



「あっ!大樹お帰り。」





「ただいま。」



なんだか不機嫌な気がする。




「椿ちゃんは一緒じゃないの?」




確かに。

いつもなら一緒に帰ってくるのに。





大樹が俺を睨む



「なっ、「今頃泣いてんじゃないの、」





………すげー怒ってる、




「…泣いてるって?」



俺の代わりに夏楠が聞く。





「誰かさんが椿の気も知らずにフラフラしてるからじゃない?」




俺に目を向けず大樹は歩く。



「…何かしたの崇くん?」



「…………」




心当たりがあるといえばあるようで、ないといえばないような。






「…ちょっと行ってくる。」





夏楠と別れて椿を探す。