「よろしくね、えっと…」


名前がでてこなくて固まる。
恋にチラリと目線を送られる。「さっきからずっと名前言ってたのに」みたいな目で。



「香川淳です」


「あ、そうそう! 香川くん! よろしくね!」


そう言うと、香川くんはニコリと笑ってくれたけど、まだ鼻を動かしてる。


花粉症なのかな?
今日は結構花粉飛んでるって言ってたしな。


私たちは挨拶をしたあと、体育館へ向かった。
始業式では、生徒会長の挨拶がある。


遥が、「ちゃんと生徒会長見といてよ!」っていうから、生徒会長に神経を集中する。


「なにもそこまでしなくても…」


と、恋が呟く。
だって、こうでもしなきゃ覚えられないんだもん!と心の中で恋に叫んだ。


生徒会長の挨拶が始まると、女子の黄色い悲鳴が聞こえる。


私は目線を生徒会長の方へやった。
遠くだからよくわかんないけど、身長は香川くんと同じくらいかな?


黒に少し茶色が入った髪の色。
指通りのよさそうなさらさらヘアー。
スピーチする時にかける眼鏡が似合ってる。
細いわけでも太ってるわけでもない、標準的な体格。
制服のボタンは一番上まで止めていて、ネクタイをビシッと締めている。


…なんか、真面目そう。
そんな印象だった。


始業式が終わったあと、遥に感想を聞かれたが、「真面目そう」と答えると、「それだけ?」と返ってきた。


他に何て言えばよかったのかな。