10分ほどして、パスタは私の前に運ばれた。どうやら桂は本当にお腹は空いていないらしく、ちみちみとコーヒーを飲んでいる。なんかコイツと二人でご飯食べなきゃいけないのは癪に障るけど、一応奢ってもらってるし。
「…頂きます。」
「おう。」
小さい声でそういうと、短い返事が返ってきた。スプーンとフォークを手にとって、少なめに取ったパスタをくるくるとフォークに巻きつける。その動作をじーっと見つめる桂がいて、……ぶっちゃけ食べづらい。
「何?」
フォークが絡め取ったパスタは、あと数センチだけお皿に向かって垂れている。
「いや。女って好きだよなって思って。」
「………。」
桂のこの言動が、私の神経を逆撫でた。
「なんかムカつく。オンナの何を知ってそんなこと言われなきゃなんないの?」
「は?何、」
「どいつもこいつも。私のこと何も知らない癖に--」
「…悪い。気分を害したんなら謝る。」
桂が失言を認めて、素直に謝ってきて、私は我にかえる。食事中だった。
「…ごめん。」
どうしようもない後悔と羞恥に、なんとなく桂の顔を見れなくなってしまった。どうやらまた声が大きくなってたみたいで、ちらちらと他の客がこちらに視線をよこしていた。
「まぁ…とにかく先食えって。」
桂に促されるまま、「うん」とだけ答えてパスタを口に運んだ。