桂が入った店は、シンプルな外観のパスタ屋さんだった。看板を見る限り結構お高い感じだから、入ったことはなかった。
腹が立つから思いっきり高いのを注文してやろうと、メニューとにらめっこする。と、正面に座る桂が噴出した。
「何よ。」
「や、別に?あやこマジで男嫌いなわけ?」
話を逸らされた。メニューに意識を戻す。無視だ無視。
「なー。」
「……」
「なぁって」
「……」
「あーやーこー?」
「(鬱陶しい)…何ってば」
「なんで男が嫌いなわけ?」
先ほどまでへらへらしていた桂の顔に、真剣な表情が浮かぶ。
馬鹿みたいな雰囲気は一瞬にしてどこかに消えてしまった。
私は渋々メニューから顔を上げて、口を開こうとする、けど。
「……先なんか頼もう。」
なかなか人には言えないことだってある。