「あら、エイイチロウさん、こんばんは」

私はにっこり笑ってみせる。
それから、ジュノの耳の傍で囁いた。

「ねぇ、聞きたいことがあるの。
仕事が終わったらうちにこれない?
キョウは仕事が忙しいから、多分しばらくこっちには来れないと思うんだけど」

「それって、ユリア様。
僕のこと誘ってる?」

キラキラした瞳で、何を言い出すのかと思えば……。

あれですかね?
飼い犬は主人に似るってヤツ?

私はにっこり笑って見せた。

「ええ、誘ってるわ、ジュノ☆」

もう、この程度の言葉で動じる女ではないのです。

ああ、私も成長しちゃったのかもしれないわー。
好ましくない方向に。

ジュノはつまらなそうな顔で肩を竦めて見せた。

「そんな回答、ユリア様らしくないです」

真顔で説教できる立場ではないと思いますけどねー。

「あ、じゃあさ。
ジャックを体験入店させてくれるっていうのはどう?」

「ジャックって、その余命短い吸血鬼?」

……サイテイ。

私は頭を抱える。
もうちょっとこう、デリカシーってものを考慮した喋り方は出来ないのだろうか。
この、悪魔は。