「どうやって、その。
人になったの?」

ジャックは、千切ったパンを一口齧って私を見た。
ものすごく目を丸くしている。

「ユリアちゃんって、その。
キョウさんの彼女、なんだよね?」

朝からまた、何を聞き出すかと思えば。

それ以外になんていえばいいんだろう。

「えっと、どんな関係だと?」

「ううん。
キョウさんが魔界のモノだってことは知ってるんでしょうって意味。
他意はないよ。
もちろん、お二人の関係は眩暈がするほど見せ付けられちゃってるし☆」

……いい、結構ですよ。その話は蒸し返さなくて。

私は最後の一言は聞かなかったふりで、言葉を返す。

「うん、知ってるよ」

「じゃあ、魔界で願いを叶える方法くらい知ってるのかと思ってた」

「ううん、教えて」

キョウが教えてくれない、なんて言ったらジャックも教えてくれないだろうと思い、私は極めて短く返事をした。

「いくつかあるんだけどね。
メジャーなのは二つ。
一つは、魔界に送られてきた死者の魂を100人分調伏する。
一つは、人間界の人を100人幸せにする。
どっちでもいいんだけど」

……眩暈がするほどの数字に、私は目を丸くする。

「調伏って、どうやって?」

「うーん、食欲失せそうだから詳しくは語らないけど。
人間界で人を殺すのと大差ない感じだよ。
刃物で切りつけるとか。呪詛を使うとか。
首を絞める。水につけて溺死させる。火で……」

「も、もういいですっ」

……き、聞くんじゃなかった。
私は強引に、口の中に残っているパンをオレンジジュースで胃に流し込まなければいけなかった。