私は息を呑む。

そこには、一人分に換算すると一週間を超えるほどのおかずが、綺麗にジップロックに詰められて片付けられていたのだ。

それはもう、ちょっとしたプロの手腕を思わせる。
そこらの主婦より本格的なんじゃないかというくらいに、綺麗に並べられている。
わざわざ、それぞれの袋に、何曜日の夕食とか、書いてあって。

彼の神経質ぶりさえ伺えた。


「キョウ?」

二人が消えたあたりに目をやって名前を呼んでみるが、当然に返事はない。

私は左の薬指に視線を戻す。
いつでもキョウと連絡がとれるという黒曜石のはまった指輪が、そこに燦然と輝いている。
でも、今、なにかしらの術中かと思うと、声を掛けることも憚られてしまう。

いつまでも二人が帰ってこない。

コンロの上には、今日の分の夕食が作っておいてある。
炊飯器にはご飯も炊いてあった。

金目鯛の煮つけと白菜の味噌汁を暖めながら、その暖かい匂いに何故か不安を覚えた。