キャラメルマキアートで温まった私は、窓の外を眺めていた。
暗い窓には自分の顔が映っているが、その向こうにはちゃんと外が見える。

……あ!

見間違えるはずがない。
あんな夜会服を着てこんな場所を歩く金髪の青年が他に居るとも思えなかった。

「ジャック見つけたっ」

私は飲みかけのキャラメルマキアートを持ったまま、キョウの手を引っ張ってスターバックスを後にした。

それでなくても目立つルックスのキョウが、その黒いコートの裾をはためかせて狭い店内を駆けるとそれだけで視線を集めるのだけれど。
もう、そんなことに気を配っている余裕なんて全くなかった。

私は迷いなく、カップルたちが歩いているストリートを真っ直ぐに走る。

「ジャックっ」

そのはかなげな背中に声をかけた。

私の呼吸ははぁはぁと、情け無いほどに乱れている。

くるり、と。
ジャックが振り向いた。

柔らかい笑顔だ。

「ユリアちゃん」

私は気づけば握っていたキョウの手を放し、ジャックの傍へと駆けていた。