ふわり、と。
キョウは甘い笑みをその唇に載せる。

私の心臓を、勝手にことりと鳴らしてしまうほどの、魅惑的な笑顔だ。

「ユリアのお願いなら、聞かないわけにはいかないな。
アイツは今何処?」

「知らない。
お出かけしちゃった」

「じゃあ、探しに行こうか?」

珍しくキョウが積極的だ。
私はぱたんと、教科書を閉じた。

「でも、いいの?
読書中なのに」

「これ?」

くるりと、キョウの黒い瞳が少しよからぬ輝きを放つ。

「そうだよね。
俺が真剣に読まないと、ユリアを喜ばせられないもんねぇ」

「……どうやって?」

キョウは立ち上がると、くしゃっと私の頭を撫でた。

「そりゃもう。
色々と全てを駆使して、だよ?
楽しみに待ってて?」

……。

ぞわりと、背中をえもいえぬ何かが這って行く。

「えーっと、何を待てばいいのでしょうか?」

くるりと、振り向いたキョウは悪戯を思いついた子供の笑みを浮かべた。

「そりゃ、もちろん。
めくるめくクリスマスの夜を」

……だーかーら。
ちょっともう一回、日本人のクリスマスの過ごし方について、私がゆっくりレクチャーしてあげるから!!

その、マスコミが作り上げた特番のことは、忘れてくれないかしら?
ねぇ?