がちゃり、と。
ドアの開く音がした。

あれ、私鍵閉めてなかったっけ?

リビングで勉強していた私は顔をあげる。

「ただいま、ハニー」

キョウだ。
いつ見ても綺麗な顔にうっとりと魅入ってしまう。

「おかえり、キョウ。
あれ?魔界に帰ったんだと思ってた」

さっき、ジャックがそんなことを言っていた気がするんだけど。

「一度ね。
ちょっと時間が空いたから、本屋さんに行って来たんだ」

キョウがちらりと本屋の茶色い紙袋を見せる。


「何の本?」

彼はソファに座って、そのまま本を読み始めた。
ブックカバーがついているので、その中身までは分からない。

私の質問に、キョウはちらりと顔をあげて意味ありげに笑って見せた。

「そりゃ、もちろん。
ユリアを喜ばせるための本☆」

……う。

言葉を失う私を見て、唇の端を吊り上げて笑う。

「期待しててね、ユリアちゃん♪」

これはやっぱり。
またしても。
よからぬコトを企んでいらっしゃるのでしょうか……。


私の動揺をよそに、キョウは再びその本へと視線を落としていた。