「嫌だなぁ。うち、そんなに高い店じゃないよ?」

黙り込む私に、営業スマイルさながらの爽やかな笑顔で、ジュノが言う。
うっかり引き込まれそうなほど、邪気の無いそれでいて甘やかな笑顔だ。

……まさに、適職ですね。

「ユリア様も、一度来てみればいいのに」

私はうっかり頷きそうになった自分に唖然とする。

「ねぇ、ジュノってさ。
その、お店で売り上げナンバーワン?」

「まさか。
そんな目立つことするはずないよ。
常にナンバーツー」

きらり、と。
その瞳が良く無い感じに煌いたのを、私は見逃さなかった。

「大変なんだよ。
ナンバーワンの売り上げをチェックしながら常に抑えるのってさ」

えーっと、苦労のしどころが間違っているとは思いませんか?
ナンバーワンが聞いたら泣きますよ?


私の心の疑問など何処吹く風で、さらり、と。
さらさらの髪をジュノが慣れた手つきでかきあげて微笑む。

う。
板に付き過ぎてるんですけど。