「ユリア」

黒曜石の瞳が、甘く煌く。
うう、ダメダメ。
私はこの眼差しに弱い。
否、私じゃなくても多分、誰でもこんな瞳で真っ直ぐに心の奥を覗き込まれたら、くらりと来ると思うのよね、きっと。

ここでよろめいてはいけません。

「ママに約束したんでしょう？
私の学業に支障がない生活を送らせるって」

半年前、改めてうちの両親（このときは珍しくパパも居た。まぁ、居ただけで発言権がないっていうのが気の毒なところなんだけど）にも聞かせてくれたプロポーズの台詞から、そっと抜粋して目の前に晒す。
一瞬、ひるんだキョウ。

しかし、すぐに余裕の笑顔に転じる。
こ、これは悪魔が何かしら良からぬことを思いついた顔だ……。

「ユリア、日曜日に休むって言うのはキリスト教に基づいた考え方なんだよ。
安息日、知ってる？
魔界に住む俺にはキリスト教なんて関係ないし、ユリアだってキリスト教徒じゃないよね♪」

だ、だからなんなんだ！？
安息日なんて、そりゃ、知らないけどさぁ。

あまりにも余裕の笑顔に、私は一瞬言葉を無くす。

「あのね、起源はそうでも、今の日本は既にそれを制度として採用しているの。
そして、私はその制度に基づいて運営されているところに通う高校生なわけ。
Do you understand?」

おわかり？と最後、英語で付け加えるのは私の口癖であって、特に他意はない。

強いて言えば、あまりの非常識に頭が混乱したときに良く出てくる、みたい。
あくまでも自己分析の結果だけどね。
ちなみに、残念なことにここ半年でこの使用頻度はぐぐっと上がってきている……。